ゴルゴ考査 情事編
「ゴルゴが気に入った女たち」

ゴルゴを読んでて、私が独断と偏見で「ゴルゴ、彼女が気に入ったんではないかい?」と思った女性達を今日はチョイスしてみようかと思う。

まずは第2話「デロスの咆哮」のホテル経営者アルガリータ。
彼女はゴルゴの命の恩人なので、気に入らないはずがない。
敵に拉致られ幻覚剤を飲まされたところを、ゴルゴが泊まっていたホテルの経営者アルガリータ(一緒に拉致られた)が連れ出して逃げてくれるのだ。
そのまま薬の勢いでセックスしてしまうのだが…

次の朝、腕枕してるよ…あのゴルゴが!!
後にも先にも右腕で腕枕をしてるのは、アルガリータだけ。
しかも目が覚めた後、眠っているアルガリータの頭をなでなでしてあげるゴルゴ。
こんなシーンも後にも先にもアルガリータだけ。
羨ましいぞっ、アルガリータ!(笑)



次は第41話「そして死が残った」の娼婦マリー。
彼女もゴルゴのピンチを救おうとしてくれたので、気に入った様子。
情事が終わり、ゴルゴがシャワーを浴びてる最中に警察が「東洋人の殺人犯を探している」と踏み込んできて、マリーはバスルームの前で「彼は犯人じゃない!」と庇ってくれるのだ(いや、犯人なんだけどね)。
結局はゴルゴの機転で(顔にテープを引っ付け、大きな傷があるように見せた)ことなきを得ている。
そんなマリーを愛しく思ったのか、ゴルゴはその後もう一度マリーを抱く。

何せゴルゴは、第33話の「飢餓共和国」で、女にもう一度…と迫られ、

「もういい…2度3度続けて味わえる女は…そうざらにはいない…」

と女性に対して大変失礼な暴言を吐いている(私は名台詞だと思ってるけど・笑)
というかこの女は自己顕示欲が強く、自分が白人であることを優位に思っており、単にゴルゴの好みじゃなかったのでしょう。

話が逸れてしまったが、そんなセリフを吐いたゴルゴが、マリーのことは続けて抱いた。
しかも女子の憧れ(笑)お姫様抱っこをして、バスルームからベッドルームに運んであげての2度目の情事。
今のところゴルゴのお姫様抱っこは、このマリーと、後述の第153話「ミッドナイド・エンジェル」のマリーだけ(偶然同じ名前)。



第81話「海へ向かうエバ」の暗殺者エバ・クルーグマン。
これは外せません。
ファンの中でも人気の高い作品。

エバは針でターゲットの急所を刺して殺害するという女殺し屋なんだが、仕事に対しての姿勢や方針、考え方がゴルゴとよく似ている。
そんなエバとゴルゴが、ある日客船で出会ってしまった。
お互いの名前や職業は云わないし訊かないが、同じ匂いを感じ取り、惹かれあう二人。
そんな中、客船では時限爆弾が仕掛けられていると騒ぎが起きる。
爆弾は見付かり、ゴルゴ自ら処理を申し出る。
爆弾がある部屋から全員出るように云うゴルゴだが、エバだけは出ようとしない。

「なぜ、出ていかないのだ……?」
「もし……失敗した時、ひとりぐらい道連れがいないと…寂しいと思って…」

爆弾は勿論無事に処理、二人は静かにベッドを共にするのである。

このエバの気の利いた(?)セリフがなんとも云えず、いい。

そして数年後…正確には3年6ヶ月と15日後、二人は再び出会うのである。
今度はエバが、ゴルゴのターゲットとして…。
情事を終えたあとの二人のやりとりがまたいい。

「偶然また再会できて……うれしかったわ……」
「いや……偶然じゃあない!…」
「え?」

そして部屋を出て行くゴルゴが一言…

「…じゃあな…エバ…」

お互いの名前を知らないはずなのに、ゴルゴはエバの名前を知っていた。
エバは自分がゴルゴのターゲットであることを悟る。

女性に対し、こんな感情的で感傷的なゴルゴは、これまた後にも先にもこれっきり。
後ろも振り向かず「…じゃあな…エバ…」と去っていく姿は、格好良過ぎるぞ、ゴルゴ13!
それとなくエバがターゲットであることを悟らせるゴルゴも、自分自身のルールに反すると思うのだが素敵だ。
恐らくゴルゴのことだから、エバは自分がターゲットであることを知っても、ジタバタするような往生際の悪い女でないことを分かっていたのであろう。
覚悟を決めたエバは暗殺業を廃業。
子供と一緒にはしゃいだり道端でアイスを食べたり、ほんのひと時だけ「普通の女性」を満喫し、ボートに乗ってるところをゴルゴに狙撃される。
でも愛する男に殺され、エバはこれ以上にない幸せを感じていたようだ。



第153話「ミッドナイト・エンジェル」の娼婦マリー。
彼女はスゴイ。
何がすごいって、あの強面(こわもて)のゴルゴに言いたいことを言いまくるんである。
バーに居るゴルゴに声をかけて、無理から酒を驕らせたマリーは「あんたハンサムだね」と云いながらも、

「ちょっと陰気な感じだなあ…」
「それ!その目!女にそんな目つきをするもんじゃないわよ!」
「あんた寂しそうでハンサムなんだからさ!
 そんな目さえしなきゃ、いい線行くと思うよ!
 きっと女の子にももてるようになるから、すねちゃだめだよ!」

マリーのこの言いたい放題には、流石のゴルゴも苦笑い。
ゴルゴは「ふふふ…」と嘲笑うようなことは2,3回あるものの、それ以外で笑ったことは殆どない。
ので、ゴルゴの「苦笑い」はめちゃめちゃレアなんである。

その後のゴルゴもこれまた貴重だ。
マリーに付きまとうアラブ人の客がバーに来て、マリーを無理矢理連れて行こうとするのをゴルゴは止める。
逆上したアラブ人は反撃に出るが、勿論そんな攻撃はさらりとゴルゴにかわされ、逆にノックアウトされてしまう。
部屋に行く途中のエレベーターの中で、ゴルゴの肩に寄り添うマリー。
自分の窮地を救ってくれたのだから、マリーがゴルゴにウットリしてしまうのは女なら当然である。
ゴルゴの泊まってる部屋が、スペシャルルームだと知ってソファではしゃぐマリーを横目に、ゴルゴは豪華なルームサービスを注文。
酒ならまだしも、女性に料理を振舞うゴルゴなんて本当に貴重。
そして「飲み直しだ…」とマリーとシャンパンを乾杯。
ゴルゴの乾杯も激レアだ。

そしてあまりにも無口なゴルゴに対し
「返事くらいしてよ!無口すぎるってのもよくないと思うな。」
この言葉にもゴルゴは「……」。
「処置なしね!!じゃ、ことばなしでもできることしようか?」
とマリーは服を脱ぎ、ゴルゴの服も脱がし始める。
ゴルゴの体中にある無数の傷を見て、マリーは顔を歪め、
「あんた…ずいぶんひどい目にあってきたんだね…かわいそう……」
と傷をなでるマリー。
次の瞬間、ゴルゴはマリーをお姫様抱っこしてベッドに運ぶんである。

情事が終わり、マリーが寝てる間にゴルゴは部屋を抜け出し、向かいのホテルに宿泊しているターゲットを狙撃。
警察が「このホテルから狙撃された。室内の捜査をさせてくれ。」とやってきたが、マリーが「この人は無関係だよ…だって、あたしとずっと一緒だったんだもの」とアリバイを証言してくれた。

結局ゴルゴは何故マリーにご馳走を驕ったのか、理由は分からない。
文庫版の杉森昌武氏のあとがきには「マリーにアリバイを証言してもらうためか?言いたい放題言われたので、いいところを見せようとしていたのか?」と書かれていたが、ゴルゴのことだから娼婦にいちいちアリバイを証言してもらおうなんて思ってもいないだろうし、アリバイなんぞ証明してもらわなくてもゴルゴの証拠隠滅はいつも完璧である。
いいところを見せようとした、というのもピンとこない。
ゴルゴは他人に自分がどう思われようと関係ないと思っているからだ。
なので私が思うに、ゴルゴはただ単に、マリーのことを気に入ったのではないだろうか。
ゴルゴが抱く女はいつも、何処か影があったり裏があったりする。
だけどマリーは娼婦をやっていても、天真爛漫で正直で前向きで、今まで関係を持ってきた擦れた女たちとは一味違う。
ゴルゴに対して全く臆せず言いたいことを言ってくれるが、体中の傷を見て心から「かわいそう…」と言うマリーにゴルゴは相変わらず「……」だったが、実を言うと柄にもなく「キューン」としてしまったんではないだろうか(笑)

ま、そんなゴルゴだが、マリーから「お昼にデートしようよ!」と云われたが、「ビジネスがある…」と一蹴した。